「基本構想」は、将来の中野区のまちの姿を描く区民との共通目標であり、また区政運営を進めるうえで最も基本的な指針となるものです。
令和3年第一回定例会において、私たち立憲民主党・無所属議員団は、中野区の提出した「中野区基本構想」の議案に賛成、賛成討論を行いました。
私たちは、対話の区政を掲げる酒井区長が「中野区基本構想」を作り上げた以下の過程について、大変良い取り組みであったと評価しています。
・これまでやったことのない無作為に抽出した区民によるワークショップ
・約2,000人へのアンケートを実施
・区民と区長のタウンミーティングを開くなど、より幅広く区民の意見を聞く取り組み
・審議会にも学識経験者だけでなく多くの区民が参加
・職員からも幅広い意見を集約するため、職員プロジェクトチームも設置
また、前回の「中野区基本構想」が都市開発中心であったことと比較すると、中野の最大の財産は「人」であるという区長の想いと、多様な立場・考えを持つ人々の議論が混ざり合い、「人」を中心とした以下の4項目が「私たちの大切にすること」として掲げられたことが最大の特徴と評価しています。
●多様性の尊重
●誰一人取り残されることのない社会の実現
●協働と協創の深化
●一人一人が豊かな人生を歩むための支援
異例の事態、中野区議会の採決「21対20」
今回の「中野区基本構想」の採決は21対20、中野区議会で異例の事態となりました。
そもそも「中野区基本構想」とは
基本構想は、中野に住むすべての人々や、中野のまちで働き、学び、活動する人々にとって、平和で、より豊かな暮らしを実現するための共通目標です。また、区が区民の信託に基づき、区政運営を進めるうえで、最も基本的な指針となるものです。
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/101500/d030307.html
まさかの、最終段階で「継続審査」要求
今定例会で出された「中野区基本構想」の議案が、総務委員会にて、自民党・公明党・都民ファーストの会から「継続審査」を求められました。
「継続審査」とは?
議会に付議された案件のうち、①当該会期中に結論を得るに至らず、②会期延長をしてまで結論を出す緊急性がない場合、例外的に継続して審査をすることが認められています。付託を受けた委員会が継続審査を決定し、本会議において議決することで可能となります。
継続審査の主張は「紐づく基本計画・区有施設整備計画に不備が多いから」「(今更?)文言を変えて欲しいから」。
ここまで長い時間をかけて区民・職員の皆さんと共に作り上げてきた「中野区基本構想」自体に対して、議決の最終段階で「継続審査」を行うには不十分な内容だと判断し、私たち立憲民主党・無所属議員団は「継続審査」に反対。本会議にて「21対20」で 「継続審査」は否決されました。
▶︎継続審査に反対21……立憲9・共産6・無所属6(むとう・近藤・いながき・石坂・小宮山・立石)
▶︎継続審査に賛成20……自民8・公明8・都ファ2・無所属2(吉田・竹村)
「継続審査」が否決となり、「中野区基本構想」議案を採決するために総務委員会を再開したところ、自民党・公明党・都民ファーストの会が「継続審査」と同じ理由で「中野区基本構想」議案に反対を表明。
その後、本会議にて「21対20」で「中野区基本構想」議案は可決されましたが、全会一致での可決とはならなかったことの重みをしっかりと受け止める必要があります。
▶︎基本構想に賛成21……立憲9・共産6・無所属6(むとう・近藤・いながき・石坂・小宮山・立石)
▶︎基本構想に反対20……自民8・公明8・都ファ2・無所属2(吉田・竹村)
基本構想が遅れれば、個別の計画も後ろ倒しになっていきます。中野区議会の「21対20」の重みを受け止めながらも、これ以上遅らせず議案を可決できたこと、作り上げるまでに関わった区民・職員、全ての皆様に感謝を申し上げます。
以下に、賛成討論の全文を掲載いたします。
「中野区基本構想」への賛成討論・全文
上程中の第13号議案 中野区基本構想について立憲民主党・無所属議員団の立場から賛成討論を致します。
本議案で定める基本構想は、中野区に住むすべての人々や、中野のまちで働き、学び、活動する人々にとって、平和で、より豊かな暮らしを実現するための共通目標であり、また、区が区民の信託に基づき、区政運営を進める上で、最も基本的な指針となるものであり、おおむね10年後に目指すまちの姿を示すものであります。
現基本構想は平成17年に策定され、以降、平成22年、28年と改定されて参りましたが、時代の経過とともに社会状況や価値観も変わりました。新しい区長のもと、新しい時代に即した新しい基本構想を早期に定め、区民と議会と行政が10年後の街の姿を共有し、このコロナ禍における厳しい時代を乗り越える事が必要であると考えます。
また、本議案が否決される事により、基本構想の策定は第3回定例会にも後ろ倒しになるとも聞き、7か月の空白期間を生じさせてはなりません。基本計画や関連する個別計画も遅れ区民生活にも多大なる影響を及ぼします。
新たな基本構想の策定においては、基本構想審議会での議論、区民意見交換会、パブリックコメントを行うことが必要ですが、対話の区政を掲げる酒井区長は、それに加えて無作為に抽出した区民によるワークショップや、約2,000人へのアンケートを実施し、また、区民と区長のタウンミーティングを開くなど、より幅広く区民の意見を聞く取り組みを行って参りました。審議会にも学識経験者だけでなく多くの区民が参加し、また、職員からも幅広い意見を集約するため、職員プロジェクトチームも設置されました。基本構想の取りまとめに不可欠であったこうした議論に参加していただいたすべての皆様に感謝します。
中野の最大の財産は「人」であるという区長の想いと、多様な立場・考えを持つ人々の議論が混ざり合い、多様性の尊重、誰一人取り残されることのない社会の実現、協働と協創の深化、一人一人が豊かな人生を歩むための支援、と「人」を中心とした4つの項目が「私たちの大切にすること」として掲げられたことが最大の特徴であり、また私たちが評価する点です。
コロナ禍において策定される基本構想でもあります。区民の生命・健康・財産を守るための体制強化が盛り込まれただけではなく、感染者等に対する偏見・差別に対する問題意識が示されたことも重要です。中野区男女共同参画・多文化共生推進審議会では、性別、性自認や性的指向、国籍や文化、年齢や世代、障害等の多様性を認め合いながら、あらゆる場面において個性や能力を発揮できる地域社会の実現に向けた議論を進めています。こうした取り組みが大きく花開くことを期待しています。
子育て先進区の実現に関連したところでは、子どもの育ちを未来の希望として地域全体で支えるまちを築くと掲げられました。その中でも特に子どもの命と権利を守ること、若者のチャレンジを支援することが盛り込まれた点を評価します。
今後10年で高齢化はますます進展していきます。いくつになっても自分らしく生きられるまちの実現が掲げられました。地域包括ケアシステムの構築は急務です。病気や障害だけでなく、いわゆる8050問題やダブルケア、孤立など様々な課題を抱える一人ひとりに必要な支援を届けると共に、コロナ禍で重要性がさらに増したフレイル予防、認知症予防に積極的に取り組んでいただくことを期待します。
中野の最大の財産である「人」は区民だけではなく、区職員もしかりで、地域に飛び出す職員像は、新たな行政サービスの息吹を感じるものであります。中野に関わる全ての人と協働しながら、豊かな暮らしの実現をめざす視点は評価する所であります。
様々申し述べましたが、そもそも基本構想は、将来の中野区のまちの姿を描く区民との共通目標であり、また区政運営を進めるうえで最も基本的な指針となるものであります。区民はもとより、区職員にとっても区政の方向性や区が実施する施策の全体的な姿が示されることは、まちづくりに意欲や力を注ぎやすくなり、区政の活力と区民参加のさらなる促進につながるものと考えます。
新型コロナウイルスは単なる感染症という問題ではなく、私たち人間の生き方を根本から覆し、世界の秩序や文明すら一変させました。我が国においても現代会では収束に向けた見通しは立っておらず、こうした不確かな時代だからこそ、中野区には区の将来像と方向性を明確に示すことが今こそ求められております。以上の理由から、賛成討論といたします。