令和6年第2回定例会にて一般質問を行いました。
※文字数を省略したので、詳細や正確な質疑は中野区議会議事録をご確認いただき、疑問等は直接気軽にお問い合わせください。SNS等で断りなくHP文章の一部を切り取る行為はご遠慮ください。
目次
1、新しい時代の教育について
(1)探究学習について
(2)NEXT GIGA(ネクストギガ)について
(3)ひとりひとりの可能性を引き出す学びの実現について
4、保育園・幼稚園について
(1)幼稚園について
(2)保育の質について
1、新しい時代の教育について
この4月より、新教育長が就任された。さらに時代に合った変化となることを期待。現行の学習指導要領では「どのように学ぶか」が重視。
技術革新が進む予測困難な時代に、自分たちで未来を切り開き対応できる力を身につけるため「主体的・対話的で深い学び」を実践する必要があるなど、新時代の教育の充実が求められる。
(1)探求学習について
「探究学習」とは、自ら課題を設定・解決に向け情報収集・整理し、意見交換や協働しながらよりよく課題解決するもの。文部科学省HPには「変化の激しい社会に対応し自己の生き方を考えていくための資質・能力の育成を目標」とある。
2022年度から高等学校で必修化、今年度は渋谷区の小中学校で毎日午後が「探究」の時間となりニュースに。これからの時代に重要な役割を果たすが自治体の間で差がある。
「探究」ではさまざまな力が身につくが、一番重要なのは、学びの楽しさにつながること。好奇心に基づいた学びが、「問い」の連鎖から、没入感や達成感へ、そして子どもの自己肯定感へと繋がっていく。本来知ること・学ぶことは楽しいもの。子どもたちに学びが楽しいことを、もっと感じてほしい。
未来につながる子どもたちを育てるため、中野スタイルの「探究学習」を目指すべき。
中野区の現在の取り組みと見解は? まずは教育委員会や教員の意識醸成から取り組んでは?
中野区の回答:
学習指導要領に基づき、総合的な学習の時間を中心に、探求的な学習に取り組んでいる。各教科の授業でもプロセスを取り入れている。今後、授業力向上の中心を担う「教育マイスター」教員を活用して探求的な学習を重視した授業研修を行い、研修や授業公開で取り組みを広める。
「探究学習」では他者との協力・協働が必要。
学校を飛び出し実践することもある。積極的に専門外のテーマでも子どもたちの自由な取り組みを応援していくべき。
文部科学省のHPには「探求」活動への支援を行う府省庁・関係団体紹介が掲載されており、愛知県名古屋市では個別に参入民間事業者を募集・教育委員会との業務提携を進めている。
「探究学習」実践のため、学校と外部とのさらなる連携を進めては?
中野区の回答:
大学や専門機関と積極的に連携を図る。
(2)NEXT GIGA(ネクストギガ)について
GIGAスクール構想の推進後、各自治体で端末を更新する時期を一般的に「NEXT GIGA」と呼び、端末のさらなる利活用促進や環境更新を図るフェーズを指す。
漫然と過ごせば、先行自治体との差がさらに広がり歴然となる。
R6年2月文部科学省デジタル学習基盤特別委員会の第3回配布資料「教育DXに関するKPI」で、教育改革の推進に向けた定量的かつ具体的なKPIなどが盛り込まれ「いつまでに何をするか」が示された。
上記と照らし合わせ、中野区の取り組みはどこが不足しているか? 今後の教育DXの方針の参考にしては?
中野区の回答:
クラウド環境を活用した校務システムになっていないなど基準を満たしていない事項もあり、教育の情報化推進計画の改定に向けて参考にしたい。
先進自治体と比較すると、教育DXは遅れをとっていると感じる。
国はR5補正予算やR6年度予算、また特設HPのStuDX Style(スタディーエックス)で情報発信・共有など、自治体間の差を埋める支援を示した。
中野区が実施予定の取り組みは?
中野区の回答:
現状把握に努め、検討検証を進める。
中野区でもR7年度が1人一台端末の更新時期。文部科学省がR6年1月に出した「学習者用コンピュータ最低スペック基準」では、標準ではなく少なくとも満たすべき仕様で、国の補正予算にて端末補助単価5.5万円、公立学校は都道府県経由で共同調達となる。
現在の区の端末はiPad、コスト面では他に比べると高いといわれているが、市場価値が高くAppleでは残価設定型リースプログラムを用意。他の端末でも、現場負担を減らす仕組みなどサービスを付加。
GIGAスクール構想の当初では全国的に機材不足、端末の一斉調達は困難だった。また、端末調達にはコスト管理の視点もある。しかし、真に必要とあれば補助単価が上回ってでも「子どもたちにとって最適であること」を重要視してほしい。
今回の更新時期では安定的に揃えられるか? また、子どもたちにとって最適であることを重要視した調達が可能か?
中野区の回答:
「教育委員会情報システム委員会」で最適な端末の検討を始めている。安定的な調達方法について情報収集をしている。
教員の校務用端末は職員室固定の「ネットワーク分離型」の運用が多く、教育DXの阻害要因。校務DXの推進は、学校における働き方改革にもつながる。
中野区もいまだにネットワーク分離型、残念ながら遅れをとっている。
文部科学省がR5年12月に出した『「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」に基づく自己点検及び学校向けヒアリングの結果の取りまとめ』の各自治体結果で、中野区は設置者部門では23区中下から2番目の250点。都平均279点、お隣渋谷区は420点、取り組みの遅れが際立つ。
R8年度以降の校務機器等の更新タイミングを待たず、「教育の情報化推進計画改定」と並行して取り組んではどうか?
中野区の回答:
改定作業と合わせて、学校情報化支援事業委託事業者の意見を参考に進めたい。
生成AIが急速に普及しつつあり、国はR5年7月「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」にて、現時点での活用判断の参考資料を示した。
リスクが大きいと考える人も多く、導入は進んでいないが、「中野区にいたから学べなかった」では手遅れ。新しい技術に挑むから見えてくることもある。
上記ガイドラインを基にルールを制定すれば、正しく活用できるのではないか。検討が遅れ、子どもたちが時代に取り残されることはあってはならない。
教育現場での生成AI活用検討を前に進めては?
中野区の回答:
段階を追って進める必要があり、まずは教員が活用できるよう、課題整理する。
(3)ひとりひとりの可能性を引き出す学びの実現について
教育DXが進めば、個別最適な学びの環境が整い、さらに自由進度学習となる。
これまでの評価軸は「集団の中の他者と比較する相対評価」であったが、これからは「評価基準と比較する絶対評価」に変わってくる。しかし評価設定は難しく、教員が子どもたちの情報を個別に見ていく必要がある。
そこで期待されるのが、さまざまなシステムに散在している教育データを集約、1つの画面を見るだけで情報を把握可能にする仕組み「教育ダッシュボード」。学習活動をデータ取得し、可視化・分析できれば、授業改善に活用できるため、都立高等学校や先進自治体で導入され始めている。また、データを共有化し、多くの大人が連携して1人の子どもを見ていける。
中野区でも子どもたちひとりひとりの最適な学びを支えるため、導入を検討しては?
中野区の回答:
有効性は認識しているが、目的を明確にデータを選定する必要があり、情報収集と課題整理を行う。
インクルーシブ教育の推進にも、DXが役立つ。
特別支援教育や不登校対応など、誰1人取り残さない学びを提供するため、子どもひとりひとりへの深い理解・実態に合わせた合理的な配慮や指導内容が重要となる。今、それらに特化したソフトが出てきている。例えば「リタリコ教育ソフト」では、個別の教育支援計画・指導計画の作成、教員向け研修動画など、教員を包括的にサポート。
データは教職員や学校間はもちろん保護者とも情報共有でき、小学校から中学校に上がる時も円滑な引き継ぎが可能、切れ目ない支援の実現を支えてくれる。
より配慮が必要な子どもたちへの支援に取り組むため、速やかに特別支援教育ソフトを導入しては?
中野区の回答:
その有効性や費用対効果を研究し、効果的なものは学校に情報提供していく。
2、身寄りがない高齢者などの支援について
高齢化や長寿命化が進み、R6年度、中野区でも「65歳以上人口の高齢者割合」は現在約20%、高齢者を含む世帯数のうち「高齢者単身世帯割合」は約53%を超えている。
加えて少子化や家族関係の希薄化で、頼る身寄りのない高齢者も増加。自ら意思決定できる高齢者が1人尊厳のある生活を選択したくても、入院・手術、介護保険施設へ入る際など、身元保証の有無が制約となっている。
従来の「人」「家族」に依存した身元保証は、行き詰まる恐れがあり、家族に頼らない制度のあり方が問われる。
社会の急速な変化に課題を所管する省庁がなく、国は昨年度、厚生労働省が実態把握を行うとした。中野区では住宅においてあんしんすまいパック」「、社協の「あんしんサポート」など支援制度はあるが、身元保証ではない。
昨今、身元保障の民間サービスが広がる一方、契約トラブルが相次ぎ、国民生活センターへの相談件数は近年5年で3倍、内閣府はR6年4月第1回孤独・孤立対策推進本部で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」を示した。
静岡市では身元保証業者との契約ルールなど基準を定め優良認証する制度を導入、市民向けガイドラインを定めたり、民間サービスと協定を結び連携する自治体もある。
中野区でも、喫緊の課題と捉えて、国のガイドラインの有効活用や身元保証制度の構築など、あり方と具体的方策を検討しては?
中野区の回答:
民間事業者による身元保証サービスの提供について、地域包括支援センター等にて相談対応している。区民周知を推進したい。
高齢者が死後を含めて安心して自立した生活を送る取り組みの構築が急がれる。
服薬情報や遺言書、身元保証会社との契約も家の中で埋もれて見つけられない、互助会登録情報を気付かず葬儀後に未利用解約することがあると聞いた。
近年、身寄りのない方の「孤独死」が全国的に増え、親族に遺体引き取りを拒まれる事例もあり、その場合、行旅法または墓地埋葬法で扱われて費用負担と親族探しなどの事務負担は自治体。また親族がいても自治体が拙速に処理をし、無縁仏とされてしまった報道も。
今後も「孤独死」が増えれば、自治体側の負担も増えるはず。
先進自治体と呼ばれる神奈川県横須賀市では、「終活情報登録伝達制度」で電話一本で終活データを登録でき、神奈川県大和市では生前に埋葬契約など、法律の専門家と連携し支援。
既存の地域包括システムを活用するなど、どう生きるか、死後どうするか、区が親族や事業者情報を集約できる制度を検討しては?
中野区の回答:
要支援社台帳システムで基本的な情報は集約、伴奏支援に活用してきた。今後、地域包括支援センターの情報の集約化も図っていきたいが、エンディングノートの作成支援を並行して行い、終末期の支援を充実させる。
3、南台小学校新校舎移転について
南中野地域では3つの小学校が2つに統合され、来年度4月には地域最後の移転となる南台小学校の新校舎が完成、児童・関係者から待ち望まれている。
しかし他地域の移転の際、年度頭で忙しい中、教職員が引っ越しの対応をして大変苦労したと聞いた。教職員は本来の業務に専念させるべき。
教職員負担を最低限に抑えるように引っ越し業者を手配しては?
中野区の回答:
可能な限り事業者等に任せる。
学校は地域の中心。
南中野地域ではこれまで小学校を借りてお祭りなどを行なってきた。新校舎は人工芝のため、7町会・自治会合同の防災訓練をこれまで同様の形で実施は難しいと分かるが、新避難所となる新校舎で実施しなくては意味がない。
新しく多目的室なども増えるが、裏手の駐車場など、日頃教育活動に使わない部分も活用できる可能性がある。
従来どおり「開かれた学校運営」で地域やPTAの声に耳を傾け、柔軟に地域活用を対応してもらえないか?
中野区の回答:
多目的室や地域連携室などを使いやすい1階に設置。その他も学校長と相談の上、活用してほしいと考える。
4、保育園・幼稚園について
幼児期の学校教育・保育支援の向上を目指して始まった「子ども・子育て支援制度」が改正、保育給付認定がなくても利用できる「子ども誰でも通園制度」が示された。
これまでも幼稚園では共働き家庭向けに預かり保育が増え、保育内容では幼稚園保育園の共通指針「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が設定、それぞれ文部科学省・子ども家庭庁と省庁一元化はされていないが、違いは薄れつつあり、今後も幼保共通化が進むと考えられる。
昨今、待機児童が減り、区内でも閉園する幼稚園や保育園が出てきたが、今後少子化が進んでも、多様かつ質の高い保育を受ける権利、施設へのアクセスの保証は自治体の責務。
(1)幼稚園について
かみさぎ幼稚園については、R6年1定子ども文教委員会にて建て替えの考え方が報告された。しかし区立幼稚園・全体について「こども園化」の方針も含め、未だ今後のあり方が示されていない。ひがしなかの幼稚園の老朽化も進み、これ以上先延ばしできない。
区立幼稚園を子ども園化や民営化する自治体が多い中、世田谷区では待機児童のために子ども園化する予定を、社会状況の変化から集約化し幼稚園のまま残す方針に変更。
他自治体の状況等も改めて整理し、区立幼稚園のあり方についての考え方を早期に示すべき。
スケジュールと見解は?
中野区の回答:
園舎建替と併せて検討する。
2つの区立幼稚園はどちらも北部区境。かみさぎ幼稚園は現地で建て替え、通いたくても遠くて選択できない方もいる。今の場所に留まることが正しいのか。根本的な配置検討も必要。
また、障害を持つ子が区立園に集まる傾向。保育園利用は就労などの条件があるため、未就労家庭の受け皿は幼稚園・こども園となっている。国は今後、インクルーシブ保育を目指している。「子ども誰でも通園制度」が発展すれば、保育園でも未就労家庭の障がいを持つ子どもの受け入れが進んでいく可能性もある。
共通化が進む中、区立の幼稚園・保育園を縦割りで事業のあり方を考えるのではなく、未就学児施設として総合的に検討しては?
中野区の回答:
今後区立幼稚園・保育園でも様々な状況の児童の入園が進と見込んでおり、柔軟な対応ができるよう見直す必要があると認識。
(2)保育の質について
理想は、保育園を必要とする方が必要なタイミングで利用できること。それには常時定員に空きのある状態が必要。
待機児童解消後、一部支給も含めた運営補助などを実施する自治体が増えた。
また、国は子育て支援相談機能など、保育園の多機能化を進めており、今後は園に預けていない家庭にとっても子育て拠点となるため、通いやすい距離に維持される必要がある。
空き定員補填を含め、保育園が選択すれば収支補填となり存続できる仕組みを検討、充実しては?
中野区の回答:
0歳児が年度途中で入園するまでの補填として、子ども誰でも通園制度や一時保育の預かり先となる方策を充実させる。
区ではすべての園で保育の質を確保するために「保育の質ガイドライン」を作成、昨年改訂したものの、コロナ禍もあり、内部活用にとどまっている。
子どもにとって本当に必要なことは何か保護者が知ることで、事業者も育つ。子育てに関わる人全てで「保育の質ガイドライン」の理解浸透が必要。
世田谷区では漫画活用でわかりかすい解説パンフレットを作成、他自治体でもガイドラインの目的や、保護者向けにガイドラインを交えた実践事例紹介などを実施。
理解浸透のため、まずは区立園から「保育の質ガイドライン」を活かした保護者向け情報発信を充実しては?
中野区の回答:
発信方法に工夫を凝らして、理解・浸透を図る。
「どこでもいいから預ける」状況から「入園先を選ぶ」時代に。保護者の就労形態は変化、年度途中入園も増え、相談内容は細分化、区側の負担も増える。
例えば、チャットボットなど保育DXを導入してマニュアル化を進めると、保護者側から見ても入園情報がさらに整理される。
また、今後希望者全入園となれば、区でも情報集約して課題蓄積し、何を優先すべきか、指数や加点のあり方を検討できる。
今後どのように煩雑化する入園対応を整えていくのか、区の方針と見解は?
中野区の回答:
これまで入園することが難しかった事由や指数での入園が可能となってきた。兄弟同時入園や里帰り出産の期間の取り扱いの課題も出てきた。入園申し込み状況を分析し、要件や指数を見直し、改善したい。
近年、不適切保育の報道が増えた。また、保育士が働きやすい適正な環境を整えることは、保育の質向上に大きく関わる。
これまでも児童福祉法で年に1回実地検査を義務付けている指導検査に力を入れるよう指摘してきたが、児相設置市となり人員体制が強化されても、未だ100%実施できてはいない。
区の責任において、指導検査の人員体制を強化すべきでは?
中野区の回答:
区内保育施設の実地検査は、少なくとも2年に1回は実施、できていないところも書面審査をしている。人員配置や検査体制を見直し、施設数を増やしたい。
今回の「子ども・子育て支援制度」改正の中で、76年ぶりに保育士配置基準が見直され、現場負担が軽減。
しかし、保育士確保が難しいため「当面の間は従前の基準により運営することも妨げない」と期限未定の経過措置が設けられ、利益優先の事業者がいた場合、今後も最小人数しか配置されない懸念も残る。
区立園の4月保育士配置は新基準を満たしているか。また、私立園の改善状況の把握をしてはいかがか?
中野区の回答:
区立園の保育士配置は新基準に照らしても不足はない。各私立保育園に「施設調査書」提出を義務付けており、配置基準を満たしているか確認し、新基準に照らしても不足はない。今後も継続されているか、毎月の書類を確認し、状況把握を行う。
以上。