中野&区議会報告

2021年2月19日、河合りな一般質問「子どもの権利/プレーパークなど理念実現の場/一時保育の拡充など」令和3年度・第1回定例会

令和3年度第1回定例会での、河合りなの「一般質問」と中野区からの回答概要を載せます。正式な質疑内容は中野区の議事録をご確認ください。

「一般質問」とは

区政の一般事務の執行状況/将来方針/政策的提言/行政課題などについて、
議員が区長などに直接質問し、公式見解を引き出すことができる重要な機会。区民にとって必要不可欠な政策や制度を整える目的です。

目次

1、子どもの権利について
(1)子どもの権利擁護条例制定について
(2)プレイパークなど理念実現の場について
(3)子どものアドボカシー(意見表明権)について
(4)子ども・若者支援センターについて
(5)保育の質ガイドラインについて
2、コロナ禍の令和3年度予算(案)について
(1)ひとり親家庭への支援について
(2)一時保育の拡充について
3、地域共生社会について
4、広報について

1.子どもの権利について

春のコロナ禍は、公園の遊具はぐるぐるまき、学校は臨時休業、声の小さい「子どもの権利」が真っ先に奪われた。児童福祉と虐待防止の観点からも重要。

(1)子どもの権利擁護条例制定について

昨年区で「子どもの権利擁護推進審議会」が設置。

「子どもの権利」を認めるとは、子どもの言いなりになることではなく、意見を聞き最善の利益を判断、誠実に対応すること。条約があっても条例を作るのは、権利侵害時に公的第三者機関を置くなど、迅速な救済・回復のため、地方自治体の自主法である条例制定で根拠を持つ必要がある。

また、国連子どもの権利委員会より「再度の勧告」を受けていることからもわかるように、日本政府は子どもの権利条約に対する基本認識と姿勢において極めて消極的なため、条例によって理念を具現化し、改善すべき。

作り上げる過程で議論を深め、大人が子どもを一人の権利の主体として尊重、権利侵害から守り、自分らしく生きることを支えていく意識の醸成が、当事者の子ども、保護者、地域、行政、私たち議員にも必要。

子どもたちの意見を聞く機会を設け、条例啓発の取り組みも早期に検討を。

中野区の回答:条例の検討過程で、子どもの権利に関し地域の理解を深めることは重要。意見聴取は、審議会での議論を参考にしながら、インターネットを活用した意見募集など効果的な手法を検討。区民周知について、タウンミーティングなど、様々な機会を捉えて条例の普及啓発を進めていく。

二度目の緊急事態宣言、子どもの権利擁護推進審議会は2回延期。

児童相談所機能を備えた「子ども・若者支援センター」と、権利救済と回復の仕組みを含む「子どもの権利条例」は車の両輪。早期の条例制定が望まれる。当初予定から遅れが生じないよう進めては。

中野区の回答:条例について、審議会の答申を踏まえ、令和3年度に条例提案を予定。開催スケジュール等を調整し、当初の予定どおり条例を提案ができるよう進める

(2)プレイパークなど理念実現の場について

条例制定後は、子ども自らが未来を切り開く力を発揮する場、家庭だけではなく社会の中で受け入れ、認められる居場所を準備し、子どもの権利条約31条「遊ぶ権利」を、子どもたちの手に取り戻す必要がある。

区は基本計画(素案たたき台)にて「子どもの遊び・体験の場の確保」を定めた。児童館やキッズ・プラザ等において、子どもたちが主体的に取り組み、のびのびと自らやりたいことに挑戦できる施策に取り組むとともに、「遊び」や「外遊び」の考え方を具体化する取組を拡充すべき。

また、区内のプレーパーク実施団体の実績を評価し、さらに支援を拡充すべき。

中野区の回答:子どもたちが屋内外で遊べる環境充実は重要。「外遊び」を推奨、児童遊園、児童館の園庭、公園等の区有施設などを最大限活用した遊びの場を提供したい。

今後多くの施策や公園再整備計画にも、子どもの権利条例を反映していくべき。

2017年の都市公園改正法で、利便性向上のため公園協議会の設置が認められた。今後、遊具のあり方、ルールなど、子どもも含めた住民参加で作っていくことが重要。

子どもの権利の観点から、成長・発達の影響も考え、砂場の設置なども検討するよう、遊具入れ替えなど公園を再整備する際には、子どや地域の意見も反映しては。

中野区の回答:これまでも遊具の更新で、子どもを含めた利用者や地域の声をきき、遊具を決めた。公園の再整備を行う際には、子どもを始め、利用者の意見や地域の声などを聞くことは大切。公園再整備計画にもこの考え方を盛り込む予定。

(3)子どものアドボカシー(意見表明権)について

アドボカシーとは「当事者の声を聴き権利を守る」という意味で、子どもの権利条約にも「参加する権利」がある。

子どもの声が軽く扱われる背景には「女、子どもは黙っていろ」という文化が未だあり、男女格差を国別に比較した世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」2020年版では調査対象の世界153カ国のうち、日本は121位で過去最低。同じ構造の中で「子ども差別」がある。

子どもは子どもであると同時に、一人の人間。意見を汲みとり、周囲に働きかけてくれる大人がいたら、どれほど救われるか。

子ども関連の施設や施策で、子どもの意見を汲み取り、大切にする仕組みを設けるべき。

中野区の回答:子どもが自由に自分の意見を表明する権利は、児童の権利に関する条約において保障されていて重要。審議会答申や議論を踏まえ、子ども関連の施設や施策に関する子どもからの意見聴取について、仕組みを検討。

(4)子ども・若者支援センターについて

中身の議論が進む中、児童相談所や一時保護所は「子どもの権利」が守られる場所にする必要がある。

地域によっては職員数不足、保護児童の慢性的定員超過状態、職員の疲弊も指摘されており、歴史的観点からもトラブルを回避しようとするほど管理的ルールとして厳しくなる。

子どもたち一人一人の意思を尊重したケアの視点を持つルール作り、人的配置を整えるべき。

中野区の回答:区は厚生労働省が作成した「一時保護ガイドライン」を踏まえ、できるだけ家庭的な環境の中で子どもの権利が尊重、安心して生活できる体制を確保し、一人ひとりの状況に応じた適切な支援を実施する。子どもの権利が保障できるよう、必要な人員体制を整備。一時保護所からの通学は、子どもの安全確保や通学手段などの課題を整理した上で、教育委員会とも協議しながら検討。

安全な場づくりには、職員の環境整備も重要。社会問題と化している人手不足の背景として、子ども虐待対応件数が平成30年度過去最多の15万9850件を記録、この10年で10倍以上に増加した一方、人員は2.5倍程度しか増えていない。

増加する相談件数や年度途中での職員の休職・休業等にも配慮が必要では。

しっかり研修を受けられるような体制にすべき。児童相談所を設置した先行3区でも運営上の利点や課題が出てきた頃、加えて当事者や関係団体からも積極的にヒアリング、事前対策を十分に進めては。

中野区の回答:児童福祉司は、東京都杉並児童相談所や区の子ども家庭支援センターの児童虐待相談対応件数実績に基づき、必要な人員体制を整備。適切な対応ができるよう研修体制の充実を図る。準備には、先行3区の状況や他自治体へ研修派遣している職員などの情報を活かし、児童養護施設や乳児院、学識経験者などの意見を聴くなど、万全の準備を行う。

虐待対応は児童相談所だけでなく虐待に至る前の予防機能強化も重要。

しかし、未だ身近な相談窓口のすこやか福祉センターの対応に一部不満の声あり。

足立区は庁内すべての窓口職員がゲートキーパー研修を受け、相談者の隠れた悩みにきづき、受け止め、取りこぼさない取り組み。

新設される児童相談所機能とすこやか福祉センターの連携を強化、窓口では個人のスキル向上と、それだけ頼らない仕組みを検討すべき

中野区の回答:すこやか福祉センターは、相談に関する研修や、日々の業務におけるケース検討で職員のスキル向上を、所内の支援検討会議において、相談を受けたケースに対する支援方針を組織的に協議・決定、子ども家庭支援センターとの進行管理会議で支援方針を確認、役割等を共有、組織的な対応を図っている。児童相談所開設も踏まえ、虐待の未然防止等を図るため、さらに取り組みを強化する。

(5)保育の質ガイドラインについて

条例制定前から、冊子冒頭に「子どもの権利」の考え方があることを評価。区内全ての乳幼児が等しく尊重される環境は大切。

全ての保護者が希望通りの幼児施設に入れない状況である以上、どこに預けても安心な環境を作るため「保育の質」をあげ、保護者がここまで求めていいという共通認識は、施設側とも良い関係を作っていくのでは。区内の子どもに関わるすべての関係者に、「保育の質」の浸透と共有が必要。

周知のためリーフレットにまとめては。

今後できる子どもの権利条例を反映、さらに事業者や保育士の「保育の質ガイドライン」の運用の声を生かし、改定すべき。

中野区の回答:児童保護者も閲覧できるよう、保育所に閲覧用のガイドラインを配付している。子どもの育成にかかわる関係者には、区HPに掲載。今後さらに概要版リーフレット作成など、区民周知に努めたい。

2、コロナ禍の令和3年度予算(案)について

今後も続く厳しい区財政の状況は理解するが、施政方針説明に「子ども・子育て家庭へのセーフティネット強化」とあり、修学援助対象世帯の拡充は評価、さらに支援から外れやすい人、本当に困っている方を探し、手を伸ばす必要があったのではないか。

(1)ひとり親家庭への支援について

区ではセミナー等を充実させてきたが、ひとり親の貧困の根本解決には養育費に関連する支援が重要。

国は法制度の見直しと支援の流れに、都では養育費確保支援事業、他区の導入も進んでいる。都の養育費確保支援事業の導入検討、今難しいなら、いつならできるのか、支援につながる具体的な段階を示せ。

中野区の回答: 令和2年度、養育費の重要性を啓発する離婚前後の方を対象とした講座を実施。令和3年度は、講座や相談によりニーズを把握し、すでに養育費確保支援事業を実施している自治体の状況や実績等を参考に、事業内容について検討。離婚届提出時の窓口で、今後必要となる手続きや支援内容の周知をより一層強化、ひとり親家庭の相談支援を充実したい。

(2)一時保育の拡充について

施政方針説明の「身近な施設での一時預かりの試験的実施」を評価。私が議員になる前から変わらず、一番望まれている。

「第16回社会保障審議会少子化対策特別部会保育所における一時保育の経験からの提言」で、保育園型は短時間利用など気軽な預け場としてはあまり機能していない事実があり、別途柔軟な一時保育を充実させる必要性が書かれ、すでに近隣周辺区すべてで、保育園型と仕組みを変え棲み分けた、柔軟な一時保育がある。区が実施する一時保育は保育園型だけで、子育て世帯の声に答えられていない。

誰もが思いがけずに踏み込んでしまうDVや虐待を、立ち止まらせる一歩にもなる。本格実施に向けて体制を整えるべき。

中野区の回答:現行の保育園における一時保育事業について課題を整理・分析、利便性の向上を図る。区有施設を利用した一時保育事業の試験的実施の内容についても検討。

3、地域共生社会について

2020年社会福祉法の一部が改正、複合的問題でこれまで見えなかった生活困難層のための「包括的相談支援」と、人々を地域社会に包括する入り口となる多様な居場所としての「地域の場づくり」が示され、地域共生社会の実現に向けて、国は動き出している。

基本構想にも「人と人とが繋がり、新たな活力が生み出されるまち」が定めらる予定。「地域の居場所づくり」でも、誰もが参加できる仕組みが問われており、高齢者も子どもも障害を持った方も私たちも、街角でみんな一緒にいられることが、理想の形。

交通や通信の手段が発達、現代の繋がりの形は変容、ライフスタイルや価値観の多様化により、多元的なネットワークの構築が必要。コロナ禍で社会のあり方も変わり、今こそ新しい形の繋がりを模索していくべき。

区では地域をまとめるのに、地縁や町会ばかりに負荷をかけているが、求められるのは多様な参加の仕組みを取り入れること。

「地域の場づくり」として地域コミュニティの再生するには、多様な人々の繋がりの形を認め、枠組みで制限するのではなく、少しの工夫と柔軟な寄り添い支援をすべき。

助成金を出すだけではなく区が新しい地域活動団体を作る気概で、挑戦する人たちの幅広い支援に取り組むべき。

中野区の回答:地域支えあい・子育て支援・環境やまちづくり・文化芸術など、地域では様々な活動が行われており、昨今の社会状況の変化に伴い、公益性や継続性、緊急性等を考慮した、きめ細かな活動支援が必要であると認識。新たな地域活動に挑戦する方々へは、社会福祉協議会等の関係機関と連携を図りながら、アウトリーチチームによる情報提供や活動者等とのマッチング、団体設立など、実現に向けた伴走支援を行う。

区民同士の支え合いや地域課題解決を目指し、あえて通りすがりの付き合いが生まれる実験的な場を作っては。

港区「芝の家」、居場所型コミュニティで、区民、学生などにより運営、来場者の発案や趣味を生かし、街ぐるみでイベントなどを開催、福祉施設などとの連携。渋谷区「どこでも運動場プロジェクト」、道路や公園などでスポーツや遊びを通して体を動かしながら、地域に住む子どもや大人たちも集まる場を街中に広げている。プレイパークも一つのコミュニティ。

新しい形で地域住民が繋がる「地域の場づくり」を検討しては。

中野区の回答:区は、基本構想改定や基本計画策定の検討でも、身近な地域で出会う人々の、ゆるやかな繋がりを創出する取組を区民とともに進めたいと考えている。他自治体や民間団体の取組事例など情報発信し、地域住民が繋がる場づくりの必要性や活動を広げる働きかけを行い、「地域の場づくり」の手法も検討する。

新しい発想を集めるため、行政だけではなく、柔軟に地域や民間と連携し、ユニークな活動と繋がっていく仕組みが必要。

新しい官民連携の仕組みを検討しては。

中野区の回答:区内の6つの大学と民間事業者2社と包括連携協定を締結、連携事業として認知症予防プログラムにおけるデータ分析や、乳幼児の保護者支援プログラムなどを実施。基本計画(素案たたき台)「区政運営の基本方針」でも掲げており、官民連携を図っていく。

「地域の居場所づくり」が、基本構想に定められたゆるやかな繋がりを作っていければ、孤立し支援が必要・重篤していくケースを減らせる。地域のコミュニティ再生のとき。

消費者社会に慣れ、誰かにやってもらえるという意識の方が増える中、自分たちが参加して作っていく街になるよう、今以上のワクワクする取組みを。

4、広報について

定額給付金や支援リスト配布など、コロナ禍の情報発信を評価。しかし最前線の保健所の努力は伝わりづらい。

23区で比較しても、自宅療養者対策は決して見劣る状況ではなく、パルスオキシメーターの必要数は揃い、食糧支援も行った。

コロナ禍の広報を研究し、感染後の状況など不安解消のための情報発信を強化しては。

中野区の回答:新型コロナウイルス感染症に関する情報が届くようわかりやすい広報に努めているが、例えば感染症の濃厚接触者への対応フローや相談の流れを簡単な図で示すなどの他自治体の工夫なども参考にしつつ、広報アドバイザーの助言を受けながら、感染症の不安解消につながる情報を工夫して発信したい。

広報アドバイザーの活躍は、令和2年度東京都広報コンクール審査会にて3部門受賞の快挙、情報発信力の強化と改善を実感。任せ切らずに職員一人一人の学びと成長が重要。

「広報」とは「社会との関係性」を築くための活動。広報戦略を練り、全庁的に力を理解し、積極的活用が増えれば、区民とより良い関係がつながる。

広報アドバイザーの仕組みの継続、庁内全体の意識醸成につながる戦略的広報の取り組みの強化、庁内の各課の誰もが一定レベルの情報発信できる中野区版デザインガイドラインの整備を。

中野区の回答:広報アドバイザーの導入で、戦略的な広報に対する職員の意識の高まりを感じる。区報やチラシなどの紙媒体、HPやSNSなどデジタルツールによる情報発信は、質量ともに向上したが、部署や内容によって差。広報アドバイザーの成果を検証しながら継続活用し、広報クリニックや研修・セミナーなどの充実を図り、職員の広報スキル向上とマインド醸成、庁内全体の底上げに取り組む

会派で要望した子育てLINE、プッシュ型など双方向型の強みを生かした活用を。

アンケート機能で利用者情報を得られれば、今後の貧困対策や虐待予防に。

広報がリードして、子育て関連の課へ情報発信のメリット浸透と活用を促進と、今後のLINE活用の計画も。

中野区の回答:LINE公式アカウントの情報発信は、子育て関連と感染症や防災などの危機情報が中心で、新年度は子育て応援メールをLINEへ移行する予定。LINEは双方向性があり、手続きなどにも利用でき、利用者層の状況から、特に子育て世帯を対象とした活用を図る。情報収集と研究に努め、子育て関連課と情報・意見交換をしながら、活用の幅を広げたい。今後のLINE活用の計画についても示したい。

来年度「子育て支援ハンドブックおひるね」が「私の便利帳」と合わせて「なかの生活ガイド」一冊に。

20~40代インターネット利用率は約99%、子育て世代は情報収集とネットワーク構築に活用、ターゲットに合わせた集中と選択は重要。

今後の冊子はインデックス機能とし、詳細をインターネットコンテンツへ繋げるよう工夫しつつ、子育て関連情報の動画やHPなどの充実を。1%の接続できない方へも配慮を。

中野区の回答:生活便利帳はインデックス的なものにし、HPやLINEの詳細情報につなげたい。デジタルツールを利用しない方がいることも踏まえ、区報やチラシなど紙媒体による周知も、引き続き工夫する。本年度、保育園に関する動画を制作・配信、子育て関連のHPを改善。今後も子育て応援メールのLINEへの移行、HP改善や動画配信など、提供情報を充実する。