令和3年度第2回定例会での、河合りなの「一般質問」と中野区からの回答概要を載せます。正式な質疑内容は中野区の議事録をご確認ください。
「一般質問」とは
区政の一般事務の執行状況/将来方針/政策的提言/行政課題などについて、
議員が区長などに直接質問し、公式見解を引き出すことができる重要な機会。区民にとって必要不可欠な政策や制度を整える目的です。
目次
1、個別計画(要配慮者視点の防災)について
①「個別避難支援計画」の広報と拡充を
②要配慮者支援に多くの方が携われる仕組みを
③難病者や妊産婦などに防災準備の促進強化を
④妊産婦・乳児のための避難所と支援計画を
⑤防災計画に当事者団体の参画など多様な視点を
2、他から支援を受け入れる「受援計画」について
①「受援計画」の策定を
②改めて協定の見直しを
3、防災訓練/避難所について
①コロナ禍での防災訓練に丁寧なマニュアルを
②多様な方々が参加できる訓練のアイディアを
③「災害時トイレ計画」の策定を
4、防災意識の向上について
①HPの改善を
②「マイタイムライン」のさらなる推進を
東日本大震災から早10年、その後も続く自然災害など甚大な被害の反省から、国でも様々な取り組みが検討されている。
災害を超えて助かった命が、福祉ケアを後回しにしたことでおこる「認知症や要介護などの新たな二次健康被害と防ぎえる死の最小化」を目指し、すべての区民を守るため「医療・保健に福祉視点を加えたきめ細やかな防災対策と実行する体制構築」が必要。
1、個別計画(要配慮者視点の防災)について
①「個別避難支援計画」の広報と拡充を
避難遅れ防止のため「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化された(災害対策基本法の一部改正案が令和3年3月に閣議決定)。西日本豪雨や台風などでも死者・行方不明者の6~8割が高齢者、避難の実効性確保が課題に。障害のある方などの避難対策は、一人一人事前に避難方法を決める「個別計画」が有効との判断から、市町村に計画作成の努力義務が課せられている。
区では自力避難困難を支援する「避難行動要支援者名簿」(※1)作成が進み、そのうち48.6%の希望者が「個別避難支援計画」を作成。数字が低く見える。
また、名簿範囲では、要配慮者(※2)の中で抜け落ちがあるのではと懸念。
※1……現在の名簿作成基準:要介護、70歳以上単身または75歳以上高齢者、障害(手帳要件など)、その他区長が認めた方。
※2……要配慮者:災害対策基本法第8条「災害時において、高齢者、障害者、乳幼児、その他の特に配慮を要する者」と定義。その他に、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者など、日常生活の不安を抱える方が想定。
本当に必要とされる対象者や家族の理解が深まるよう工夫し、近隣に支援者がないなど一定条件の要配慮者の中の希望者の「個別避難支援計画」も作成すべき。
中野区の回答: 災害時個別避難支援計画書は、新規の対象者・これまで回答を得られていない方・4年前に調査対象だった方に対し、毎年作成を促している。郵送による調査や未回答者への訪問調査、居宅介護事業者へ委託などを通じ、丁寧に計画書作成を案内。計画書の対象範囲は、支える側の状況に配慮しながら検討。
②要配慮者支援に多くの方が携われる仕組みを
要配慮者の避難所生活は大きな負担。災害時は誰もが傷病等で要配慮者になりうる中、全ての方が理解の視点を持ち、多くの方が支援側に携われる仕組みが必要。
高知県は認知症や妊婦など14タイプ別に避難生活支援方法ガイドラインを作成、勉強会実施や避難所などに配布。千葉県千葉市は「避難所運営管理マニュアル」(※3)に要配慮者支援の落とし込みを。「災害時要配慮者支援マニュアル」作成自治体も多い。
※3……避難所運営管理マニュアル:各避難所の「避難所運営委員会」で協議し、各地域と避難所となる学校それぞれに合わせた、避難所の開設や運営・管理についてまとめたもの。
文京区は事前の福祉ボランティア登録、避難訓練などで連携。担い手不足を補う方法として有効。武蔵野市は避難者を、避難所・おもいやりルーム・福祉避難所・医療機関に振り分ける判断基準策定し、医療・保健衛生・福祉の維持・人的資源を有効活用。要配慮者支援の担い手教育や、人材資源活用を検討すべき。
中野区の回答: 区では防災リーダー養成事業を実施、地域の防災活動の担い手となる人材育成に取り組んできた。人材・団体養成とともに、地域活動につなぐ支援も検討。
③難病者や妊産婦などに防災準備の促進強化を
そもそも「地域防災計画(案)」(※4)は、要配慮者のうちの妊産婦・内部障害・難病患者の視点が少なく、区が主体的に対策を進めることは当然必要だが、事前の当事者の備えの充実も、被害を抑えるために有効。
※4……地域防災計画(案):地域における活動体制や防災活動などの災害対策に関する事項をまとめた計画書。3月総務委員会にて報告。
熊本県は地震の反省を生かし、難病患者・家族のため平時からの準備と災害時対策をまとめた「災害対策ハンドブック」、緊急時にも適切な治療などのために携帯できる「緊急支援手帳」を作成。中野区も準備や対策を進めては。
中野区の回答: 日頃から「個別避難支援計画」の作成を進めながら、情報提供や支援を行なっている。計画作成支援を進めていく。
④妊産婦・乳児のための避難所と支援計画を
令和元年決算特別委員会の中村議員の質問に対し、『避難所内に妊産婦及び母子の専用スペースや二次避難所の必要性は認識。東京都助産師会新宿中野杉並地区分会との協定締結と並行し、区有施設も含めた場所の確保を模索』と区の答弁だが、「地域防災計画(案)」では妊産婦の文字は3箇所、協定締結後の進行が見えない。
震災時、病院の機能停止・分娩集中・院内待機妊婦の多数発生・避難所内の妊産婦の把握も困難、避難所を避けるケースが続出、災害関連死に至る事例も。生まれる時は選べない。命は、災害が起こったその時も、生まれてくる。年間出生数から、母子避難者数のニーズ想定はできる。
助産師が避難所を巡回する事は非効率。障害を持っている方などからも要望あり。安心して避難するためにも、妊産婦などの福祉避難所を定め、発災直後に開設すべき。
中野区の回答: 助産師会の意見を聞きながら指定施設を探しているが、適切な場所が見つからない。引き続き努力。二次避難所(福祉避難所)の開設は、避難所では十分な救援ができない場合の開設が原則だが、困難な方も想定されるので、一部は早期開設を検討。
⑤防災計画に当事者団体の参画など多様な視点を
令和2年5月内閣府発表「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点から防災・復興ガイドライン」を、中野区の「避難所運営管理マニュアル」見直しに反映すると聞いている。
コロナ禍で、DVや性被害などジェンダー課題が拡大・強化されていると指摘あり、また「地域防災計画(案)」には性自認及び性的指向に関する言及がなく、極限に置かれた時、様々な立場の方が安全に過ごせる対策を徹底・充実すべき。
文京区は、女性・乳幼児のいる家庭など要配慮者の対応を踏まえた訓練を実施。静岡県は男女共同参画視点の防災パンフレットで、地域勉強会や職員研修などに活用。「避難所運営管理マニュアル」は、男女共同参画や福祉の課などと連携して最終確認、意見反映すべき。様々な当事者団体や地域とともに、避難訓練などを実施、さらに理解を深めては。
中野区の回答: 検討中のマニュアルの雛形には、更衣スペースや授乳室などの設置を盛り込んでいる。要配慮者の視点を考慮し、庁内で協議・調整し「避難所運営会議」に示す。各種訓練などでも関係団体と協議、要配慮者の目線を持った訓練を実施したい。
2、他から支援を受け入れる「受援計画」について
①「受援計画」の策定を
災害規模が一定以上になると、支援は不足。都内の災害は住民が多いため、膨大な被災者・支援の遅れが出る可能性。実際に多くの被災した自治体が対応に限界、国は「受援計画」(※5)を策定することを求めた。
※5……受援計画:被災した自治体がほかの公共団体や民間団体から人的・物的支援を受け入れるための手順や体制を定めた計画。
平成30年第一回定例会の酒井議員の質問に対し、「地域防災計画(案)」に「受援計画」の基本事項が盛り込まれたことは評価。しかし不十分、事前に計画を立て議論を深めるなど精度を上げておく必要がある。優先順位を上げ、速やかに詳細な「受援計画」を策定すべき。具体的スケジュール、応援側と区と現場の連携訓練も。
中野区の回答: 「受援計画」策定に向け、関係部署や災害協定団体などと検討に着手。スケジュールなどは今後。
②改めて協定の見直しを
現在区は多数の民間事業者や団体と、災害発生時などにおける救援協定の締結を進めている。連携が進んだことは評価。
今後「受援計画」を作る中で、具体的な人的・物的支援は何が必要か整理されれば、自ずと今の協定内容も見直し整理されるべき。また、事業者には積極的に連絡調整や訓練にも参加いただくなど、実効性担保のため連携強化してはどうか。
中野区の回答: 災害協定は現在120件。見直しを実施し、協定の趣旨が活かされ、より実効性のあるものになるよう取り組む。日頃からの情報交換や各種訓練への参加について、さらに働きかける。
3、防災訓練/避難所について
①コロナ禍での防災訓練に丁寧なマニュアルを
南中野地域で、2021年5月に「7町会・自治体合同防災訓練」を実施。コロナ禍での実施に様々意見はあると思うが「災害はいかなる時でも待ってくれない」と話す方あり、実際の体験で学びが多くあった。
感染症対策をした上でどのように行われたか丁寧に説明すれば、多くの町会や防災会にはご理解いただけるはず。コロナ禍だからこそ「避難所運営会議」を実施、新型コロナウイルス感染症対策版「避難所運営管理マニュアル」整備・避難訓練実施など、積極的に働きかけては。
中野区の回答: マニュアル雛形を作成中であり、これを元に改定を進める。地域から訓練など実施要望も増えており、意向を踏まえつつ、感染防止対策を徹底し積極的に提案する。
②多様な方々が参加できる訓練のアイディアを
コロナ禍で人を集めることは難しいが、避難訓練などは多様な方の参加が大切。区は「東北復興大祭典なかの」で防災体験実施などに取り組んでいるが、「基本計画(素案)」でも『誰もが参加できる防災事業の展開が課題』と記載、アイディアが必要。
横浜市のみなとみらいホールでは消防署音楽隊「避難訓練コンサート」を開催、演奏中に災害が起こる設定。NPO主催「イザ!カエルキャラバン」(※7)など、防災ゲームなどをとりいれる地域も。どんな方も気軽に参加できる防災メニューを拡充すべき。
※7……イザ!カエルキャラバン:家族や友だちと楽しみながら、防災知識を身につけることができる、新しいかたちの防災イベント。
http://kaeru-caravan.jp
中野区の回答: とりわけ30代の参加が少ない。学校の避難訓練時にPTAが一緒に参加できる働きかけ、東京消防庁のVR防災体験車(※8)など若い世代も興味の持てる内容を取り入れる。防災YouTubeなどの動画教材も充実、SNSなどで広く周知する。
※8……VR防災体験車:最新のバーチャルリアリティ技術を活用した大型車両。360°の立体映像と揺れなどの演出で、地震・火災などの疑似体験ができる。
③「災害時トイレ計画」の策定を
人間の尊厳に関わるトイレ、劣悪な環境は健康被害に。毎日新聞によると、清掃や衛生環境維持・運営などを定めた「災害時トイレ計画」は、23区のうち6割が未策定。
中野区のトイレ数は「災害廃棄物処理計画」により確保されているが「災害時トイレ計画」は未策定。使い捨てトイレの活用も含めて、具体的計画を整備すべき。
中野区の回答: 重要性認識。トイレ用品は一定量備蓄、適正な管理運営も含め「避難所運営管理マニュアル」雛形へ盛り込み、計画策定も検討。
4、防災意識の向上について
①HPの改善を
中野区HPでは「もしもの時には」の中に「防災・防犯」があり、「水害に備える」「地震に備える」などはわかりやすいが、その中の「区の対策」「地域のとりくみ」の分け方は読む側に関係ない。
SNS等で広報中の防災動画は役立つが、HPのわかりやすい場所になく、ペットの動向避難や帰宅困難者の支援情報などは検索をかけないと見つからず、防災に興味を持っても情報を探すのに苦労する現状。
東京都HPは「避難場所を確認したいときは」など分かりやすい見出しで情報整理。読む側視点を持って見直し、情報にたどり着きやすく、学べるよう整理を。
中野区の回答: 一覧化やリンク付けなど、記載を見直し、見やすい防災情報の発信に取り組む。
②「マイタイムライン」のさらなる推進を
これまで区は防災意識を高め、自らの命を守るために個人の防災行動計画を作る「マイタイムライン」作成講座を開催。一層取り組みを進めるべき。
都は防災のHPが充実。「マイタイムライン」(※9)がHP上で気軽に作成。「防災備蓄ナビ」(※10)では、家族構成などに合わせ、備蓄必要数の計算、そのまま購入できる。
※9……(デジタル版)マイタイムライン:
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/mytimeline/
※10……防災備蓄ナビ:https://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp
充実した都HPの内容を、中野区の防災HPで紹介したり、「デジタル版マイタイムライン」をSNSなどで広報してはどうか。これらを活用して「マイタイムライン」に関する講座の開催も。
中野区の回答: 各種防災情報は、区報・HP・メルマガ・twitter・YouTubeなど様々活用して周知。昨年作成した「中野区民の風水害タイムライン」(※11)と併用して、個人の生活実態に沿った避難行動計画作成に資することから、HPでも掲載、講習会の活用も検討。
※11……中野区民の風水害タイムライン:中野区ハザードマップが令和2年8月に改定、情報学習面の充実化されたところに災害・避難情報の種類と入手方法や、避難行動のタイミングを検討するためのタイムラインの掲載。
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/157700/d029325.html
中野区の「繋がりの力」を大切に、全庁横断的な防災の取り組みを進め、すべての区民を支え、守ることを要望します。ありがとうございました。